裸婦の目触れろ、白蝮踏め

安酒と薬にどっぷり漬かってラリりながら書いてるオナニー文章です

行動力の値が虚数

とてつもない悪寒と咳の気配で目が覚めた。
弟と鍋材を買う夢を見ていた。もしかしたら鍋が食べたかったのかもしれない。
食欲はないが。食べても味はわからないが。

学校の課題に出された映像授業は4日ほど溜まっている。風邪と舌先の口内炎が治らない。ここまで熱が長引くのもめずらしい。そろそろエイズを疑わなければならなくなってくる。本当にやめてほしい。
内科に行って薬をもらってくれば治るのかもしれないが、なんだか面倒くさい。普段から外に出るのが面倒なのに、風邪を引いている今そこに費やす労力は倍以上だ。フォロワーからもらったOS-1と金パブ、ビタミン剤のメガドースでなんとか凌いでいた。凌げていないが。

さて、これからどうしようか。
回らない頭で考える。
入院を重ねすぎて学校の欠課時数は規定を大幅に超えており、このままだと2留確定だ。代わりに映像授業を受講する課題をこなすことで単位が取得できる救済手段が与えられたが、なんとこのタイミングで風邪を引いて手がつけられないでいる。
正直単位云々よりも、周囲より勉強が遅れていることに目がいってしまう。周囲より頭がいいことが唯一大事にしていたアイデンティティだったのに。ちょっと躁鬱だか声帯ポリープだかで入院しただけであっという間に追い越されてしまった。短期留学も行けずじまいで、夏休み明けには学校で自殺未遂をして救急搬送され、もう学校やめたい高校なんて通いたくないと言いつつ「学校やめる?」と聞かれたら「行きたい、卒業したい」と答えてしまう。いったい何がしたいんだ。なにもせず家に引きこもってるだけでなにも得られるはずがないだろう。とはわかっているものの、体が動いてくれない。

窓の端に少しだけ見える月。
アポロ11号はあんな遠くまで行ったというのに。
僕は何処にも行けなくて、数平方メートルにも満たない部屋のベッドの上で寝返りを打ってばっかりで。
ミスiDを受ければ自分のなにかが変わると思っていた。でも結果がなんだ。選考中に未遂はするわ、最終面接は受けられずに終わるわ、選考員に(今年は諦めて辞退して)来年度の応募を薦められるわ、主治医に「もう自殺しない?」と聞かれても笑ってごまかして帰宅後父に大目玉を食らうわ、結局なにも変わっていない。むしろ人間性としては悪化しているではないか。そりゃそうだ、ミスiDを受けようと思ってエントリーシートを提出するまでは一歩だとして、そこから変わる努力を怠り続けていた。変われるタイミングはいくらでもあった。それをその都度放棄してきたのは紛れもない自分自身なのである。

真っ暗な部屋の中、天井に向かって手を伸ばす。
生白い指先は、闇に隠れて見えなくなってしまう。
まるで、どうしようもない自分の未来を見ているようだ。

鼻の奥が痛い。風邪のせいなのか、涙がこみ上げてきているのか分からない。自分のことなのに。もうなにもわからないんだ。滲む視界。割れた液晶に表示される、どうでもいい男からのLINEの通知。「なんで無視するの?」って、お前がうっとうしいからだよ。つっと水滴が目尻から枕へ吸い込まれる感覚を感じて、初めてそれが涙だと認識する。

僕、泣いてるのか。

自業自得なのに。誰のせいにもできないのに。

一丁前に、涙を流しているのか。

ああ、駄菓子屋で買った水風船に水呑場の水を溜めて弾けさせたい。
ああ、小学校から引き取ったうさぎを連れて山の上の公園に行って写真を撮りたい。
ああ、まだLINEがない時代に戻って必死でかき集めた友達のメールアドレスを全消去したい。
ああ、自分の描いた絵を撮ってYahoo!知恵袋で評価を求めたい。

そんな事に使う行動力は残っていても、もう前には進めない。ものもらいが痛い。

行動力の値が虚数だ。