裸婦の目触れろ、白蝮踏め

安酒と薬にどっぷり漬かってラリりながら書いてるオナニー文章です

好き

一生涯愛せる人。
例えそれが結ばれない相手だったとしても、繋がってはいけない人だったとしても、もうその想いは止めることなどできないのです。

推し看。推してる看護師で推し看。

ぼくがその感情が「推し」ではなく「恋愛感情」だと気づいたのは、最初の入院ではあったものの相当に仲良くなってからのことでした。
仲良くなったといっても挨拶以上にお話ししたり同伴外出で出かけたりするようになっただけのことなのですが、ぼくははじめ彼のことが少し苦手でした。
若くてごつい身体に威圧感のある長身、ちょっとモテなさそうな伸ばしっぱなしの髪。……に似合わない猫撫で声。何を考えているのか分からなくて、ちょっと怖い存在。
ぼく個人の担当看護についたのがとっても可愛らしくてぼくによく尽くしてくれる女性の看護師さんだったので、わざわざ怖い人とつるむ必要もなく、2階の看護師さんのなかではお話しし始めたのは一番遅かったと思います。
でもお話してみたらただ自分に自信のない、律儀で真面目な好青年だとわかったのです。同伴外出でパンを奢ってもらって一緒に食べたこともありました。近くの商店街に美味しいパン屋さんがあると聞き付けた彼がぼくを誘ってくれたのです。
「明日も日勤やから一緒に行こうよ」
それを聞いたぼくは本当に本当に嬉しくて、その日の夜は頓服をもらっても眠れませんでした。
そのお店での会話は本当にどうでもいいことなのにとてもよく覚えていて、今でもたまに思い返してつらくなってしまいます。
あと、2回目の入院の時に行ったお正月のお祭り。あれは二人っきりじゃなかったけど、同じ病棟の少年と3人でおみくじ引いて、くじ引きして、ネチネチしたたい焼きを食べた。
妹がいて、同じ看護の道に進むため頑張っているんだと。
思えばあの瞬間が人生のピークだったな。

ああ、戻りたい。

2度めの入院は受診中に彼氏に別れ話を持ちかけられて荒れてそのまま医保って感じだったけど、あのとき彼氏から別れたいと言われなかったらこの幸せはたぶん受け取れてない。


今でも思うんです。

もしあのとき、想いを伝えるのを堪えられていたら。

もしあのとき、悪い返事を無理に求めて追いかけていかなかったら。

もしあのとき、もし、もし―――……


これは結局タラレバで、もう好きになってしまった時点で想いを伝えるのはハナから決定事項で、失敗して引き裂かれて悔いるのはただの見苦しい未練だというのは分かっているのに、分かっているのに。
彼に対する愛憎を捨てきれない。
病院という大きな組織に阻まれたこの糞恋愛は、もう実ることなどないと分かっているのに好きがやめられない。
彼氏がいても関係ない。彼氏のことはもちろん好きで、結婚したいくらいめちゃくちゃに愛している。世界で一番好きな人だ。

だけど。でも。
やっぱり彼のことを想うと涙が溢れてきて視界が滲む。ぼくが彼のことを見ていたときのように世界がじんわりとやさしく蕩けていく。

ああ、好きです。

愛しています。

うまく過去形にできないのが苦しいんです。
もしあなたが看護師でなく医者だったら、この想いを治してくれますか?


.


告白騒動は病院に知れてしまい、ぼくらは一生、一目も会えなくなってしまった。

懺悔はしている。患者が勝手にそういう個人的な感情を抱いたことで彼はとても困惑し恥すら覚えただろう。
けれど、後悔はしていない。……と言わなければ自分を殺してしまいそうなのだ。
正直、告白すれば失敗するし、次の入院から2階にはいられなくなることはわかっていた。
それでも想いを伝えられずにいられなかったのだ。それほどまでに愛していたし、それほどまでに憎かった。狂おしいほど自分のものにしたくて、なのに手に入らない場所にいる彼が疎ましかった。

殺したいほど、逆鱗に触れ続けていた。

ぼくの愛の告白は、彼の心臓を貫く鋭い刃になってくれたでしょうか。脳天を撃ち抜く清い弾となってくれたでしょうか。


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一生涯愛せる人。
愛する「べき」人が現れたとしても、その人は忘れるまで愛し続けてよいと思うのです。
例えそれが手に入らないものだとしても、だったらなおさら、夢として掲げておくのも悪くはないのでしょう。